20

 

 

できることが増えた、というより視野が広くなったのだと思う。

 

 

 

大人には許されることがこの世界にはたくさんあって、だから私たちは早く大人になりたいって何度も口にし合っていた。

実際にはどうだろう。許されることはたくさん増えたけれどこれは大人になりたかったあの日の理由には到底届いていない気がする。例えば、あの時は四角い箱の1面しか見えていなくて、他の面を見たい、そのために箱を動かす力がほしいと思っていた。だけど、歳をとってあったのは力ではなくてただただ伸びた背に比例して広がった側面まで見渡せる視野だった。ただ、見えるものが増えただけ。見たかったものか、欲しかったものかは別として。

 

 

 

私は20になった。

 

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好きだと口にすることが増えてその分後ろめたくて、でも口にしなければならないことは噤むようになった。アスパラガスや茄子や焼き魚は好きになって、でも茸と蕎麦はまだ苦手なままだ。ずっと眠かったショッピングや美術館巡りは大好きになった。早口なくせして人の目を見て話さないところは変わらない。感情を露わにして人と口論するのはずっと不得意で、それと同じくらい今はまっすぐに人と会話をしたい。人が好きで嫌いだと思う。人前で話すことはずっと緊張することで、でも自分の頭の中を話すことは好きになった。動物はずっと大好きで、でもあの頃毎年プロフィールに書いていた飼育員になりたいという夢は、今ではずっと難しいものだと分かっている。絵を描くことや本を読むことはずっと好きで、でも今はその時間より毎週表示されるスクリーンタイムの方が遥かに多い。飽き性で好きな物を取っかえ引っ変えしている。変なプライドが生まれた。目標を立てても達成できないところは変わらない。ブラックコーヒーは得意になった。夜に泣くことを覚えた。したいことよりもできないことを見ることがくせになっている気がしている。

 

変わらないものと変わったものと、どのくらいあるだろう。変わらないっていつと比べてなんだろう。視野だけ広くなったままで私自身はどうなっている?いつまでたっても例えば10歳の私と中学生の私と高校生の私と何も変わらない気がする。全く違うとも思う。

 

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今好きなもの。たくさんある。

例えば、アイドル。アイドルは確実に私を星にしてくれて、たくさんの私たちの中でぴかぴかと1等輝く太陽でいてくれる。ライブの時に、メッセージをくれる時に、微笑みながら口にしてくれる愛してるよにいつも私は泣きそうになる。愛する、という言葉は時に彼らを縛る。その縄を携えているのは、愛で縄を編んだのは、いつだって私たちなことを私はきちんと覚えておきたい。私はずっとあなたたちのことを天使だと思っていて、それは実際そうでなくっていいとも思う。ただ、美味しいご飯とかふかふかの布団がそばにあって、そういうものがいらない時でも心は痛まないでほしいし、痛んだ理由があってほしい。幸せでいてほしいと思うことだけは簡単で、実際は難しいことだって分かる。だっていつだって難しいことの方が多い!でもその願いはいつだって透明にまっすぐでいたい。

 

あとは、まほやく! 言葉は力より人を動かすことがあるって、心を重ね合うことは難しいって、でもその先にやわらかであたたかな関係があるってことを優しい言葉で教えてくれてありがとう。後ろからも前からも刺されることが多くて、たくさん傷つくこともあるけれど、その分愛が増えているよ。遠回りしたって糸が絡まっていたってあそこには優しい手のひらがあったって分かってる。あなたが悩んだあの日もあなたたちが繋いだ手もたくさんの約束だって、ぜんぶ愛だったって思ってる。どうか真木晶さんがやさしくあたたかい物語の書き手でいることができますように。みんな健康でいてね

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いつだって胸の真ん中にいてくれるオーエンちゃんの言葉!

 

それから、人!嫌な人や苦手な人はいれど、どうしたってひとという存在を嫌いになることできない。バイト先で凹むことを言われたあと、腕にお花のタトゥーを持つかわいい人を見つけて気分が上がることがある。諭すような言葉を言ったり注意をしたりする人が性格がわるいんじゃなくて、そういう役を買ってくれている人だと分かっている。誰かの悪口を言ったあと、口を拭わずに綺麗な言葉が吐けることも知っている。愛おしい。愛おしいと感じる。嫌なことがあって、誰とも話さない日を作って、その夜に人恋しくなって泣くことがあるくらい私は人のことが好きです。家族や友人は1等!みんな、私に無いものがあって僻んで強がったりすることもあるけど(それはもう何回も!)、一緒にいたい。

 

最後に絵と言葉と音楽。絵は私のそばにずっとあって、今死んで「人生で何を続けてきましたか?」って聞かれたら絶対"絵を描くこと"って言う。思い通りにならないことの方が遥かに多くて、泣くことも怒ることも白い紙の上が1番多かったと思う。それでも、頭の中で絶えず動く映像を形にする手っ取り早い方法が絵であって私は絵が大好きだ。白から有を生み出すことも実際の風景よりも綺麗に描けることも頭の中だって形になることも、なんだか神様みたいだ。あと、言葉。言葉を紡ぐこともすきだ。今だってたくさんの言葉を紡いでる。綺麗な文章でなくたって二番煎じだって私は私の文章が大好き!綺麗な文章もすき!詩をすきになれたのはかなり幸福なことだなって思う。音楽、歌は上手くないし、楽器は弾けないし専門的なことはなにも分からないけれど、誰かの作る音楽で泣くことがある。気分が上がることがある。私はどうしたって単純で、単純に気分を変えてくれる音楽のことがとてもたいせつだ。

 

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私は私の好きなものだけで生きていたいし、限りなくそうしている自覚がある。だけど、埋められない自分の弱さがあって、じゃあ今日からはそれをなるだけ心で覚えておいて、丁寧に直して行けるようになりたい。

誰かが成功している後について自分も満足している気でいること。ついつい限度を超えて食べすぎること。自分の方を向かないからって行動せずに拗ねること。自分の好きなものを嫌いな人を嫌いにならないこと。洗い物を置きっぱにすること!

たくさんある。たくさんあるから時間をかけて直していける。広がる視野が大人になることなら、これからの大人になるってことはそういうことかもしれない。

 

 

 

 

20になった。視野が広い。広がった視野に、じゃあ何が映って私はどうしていくのか、それを考えていくことがこれからの目標かもしれない。

 

 

 

 

2023.09.03